初心者のための富士登山ガイド

 

富士山に登るにはいくつかの行程・ルートがあります。

 

五合目を起点とした一般的なルートは4本あり、行程は日帰り・1泊2日・ご来光(夜行日帰り)の3パターンがあります。
日帰りも可能ではありますが、最短ルートを使っても、往復で7時間以上を要します。
多くのコースガイドには休憩時間は含まれていませんし、登山道の渋滞、トイレの利用待ちなどにより、予定通りに進めないことも想定しておかなければならず、時間に十分余裕を持ったスケジューリングが必要とされます。
なるべく週末やお盆休み期間以外の山小屋泊登山を計画したいところです。

 

夜行バスなどで前日夜に出発、ご来光に間に合うよう到着後すぐに山頂を目指し、その日のうちに下山する、いわゆる「弾丸登山」が最近マスコミなどで取沙汰されています。
真っ暗な夜中に登山道を煌々と照らしながら山頂を目指す登山者たちの列を、TVのニュースで見た方も多いでしょう。
世界的に見ても夜間にあれほどの大人数が登山をする山は稀と言えます。
十分な睡眠を取らずに登山をすると高山病へのリスクが高まります。
まずは五合目で1時間程度休憩してから登り始め、途中の山小屋なども効果的に利用して、徐々に高度に体を慣らしていくのが望ましい方法です。
弾丸登山は極力避けましょう。

 

それぞれのルートに関する詳細情報については、現地で提供しているホームページで確認するのが最適です。
リアルタイムで情報を更新しているので、コース状況や山小屋情報なども事前に確認しておきましょう。

 

ここでは簡単に4つのルートのメリット、デメリットについて紹介しましょう。

 

@吉田・河口湖口ルート

 

富士登山者のほぼ半数が利用している最もポピュラーなルート。
起点となるスバルライン終点の五合目には大規模な売店が並び、宿泊可能な施設もあります。
駐車場の収容力も最大で、まさに富士登山の玄関口という賑わいです。
毎年7月1日の山開きに合わせてコース整備をしており、また山小屋などの設備も充実しています。
安心して登れるルートと言えるでしょう。
その反面、混雑度も最も高く、シーズン中の週末やお盆休み期間などはコース上の渋滞、トイレ待ちなどのストレスはどうしても免れないでしょう。

 

A須走口ルート

 

静岡側に3本あるルートの一つ。
東斜面から山頂を目指すこのルートの最大のメリットは、変化に富んだ山歩きが堪能出来る点。
他のルートが岩や砂礫の単調な景色の中をひたすら歩くのに比べ、登山口から6合目まで樹林帯の中を歩けるこのルートは、山歩きの本来の楽しさを最も味わうことが出来ると言えます。
森林限界を越えた6合目以降は、吉田・河口湖口ルート同様何処からでもご来光を仰ぐことが可能。
また、下山路には砂走りと呼ばれている箇所があるのですが、深い砂利がクッションになり、下山時特有の膝への負担を軽減してくれます。
但し、砂利が靴の中に侵入してくるのを防ぐためのスパッツは必携。
また、8合目で吉田・河口湖口ルートと合流するため、そこから先は渋滞を免れません。

 

B御殿場ルート

 

4ルートの中では最も標高の低い1,440m地点に登山口があり、所要時間もたっぷり10時間以上はかかるロングコース。
ある程度山歩きに慣れた人向きと言えるでしょう。
山小屋や売店などの施設が少ないため、水分を多めに確保しておく必要があります。
またトイレも少ない上に、遮るものが殆どないこのルートは、女性には少々過酷な登山を強いることになるかも。
それだけに利用者は少なく、混雑とは無縁の山歩きが楽しめるでしょう。
下山路の大砂走りは足に優しいフカフカの砂利道で、ここからの開放感溢れる雄大な眺めも魅力の一つ。
このルートは山小屋利用の1泊2日行程が一般的です。

 

C富士宮ルート

 

登山口の標高が2,380mあり、山頂への標高差が最も少ないルート。
山頂の最高地点にあたる剣ヶ峰へ最短距離で到達出来るため、河口湖ルートに次いで人気が高い。
駿河湾、相模湾を見下ろす爽快な大パノラマが魅力で、標高3,000mを超える高山から海を臨められる箇所は世界的にも希少なのです。
但し、距離自体は短いのですが、傾斜のきつい砂礫の道は決して初心者向きとは言えないでしょう。
4ルート中唯一登山路と下山路が同じため、道迷いの心配は少ないものの、混雑度が高く、すれ違い困難な狭い箇所では、順番待ちの渋滞が発生することも。
ガイドブックの歩行時間は参考程度に、余裕のある行程で臨みたいところです。
マイカー規制の影響を最も受けており、7〜8月の登山期間中はシャトルバスで登山口へアクセスするのが原則となります。

 

 

日程に余裕がある人は、山麓から登る「吉田口ルート」「精進口ルート」「須山口ルート」をゆっくりと時間をかけて登ってみては。
古来からの富士山信仰に思いを馳せながら、変わりゆく山岳風景の醍醐味を満喫するこれらの古道こそ、本当の意味で「世界文化遺産としての富士山」を堪能する旅と言えるのではないでしょうか。

 

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